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器のこと
かたち、色、手触り──
ひとつひとつの器が持つ個性と、その成り立ちについて記しています。暮らしの中でふと感じる静かな存在感をたどるような記録です。


届けたい気持ちがある(しかし推しすぎは良くないだろう)
20代前半の頃でした。 垢抜けずセンスもなく、でも自分の何かが変なことは理解できている… そんな時に出逢った、洋服のセレクトショップがありました。 「a.arm神戸」というお店です。 作家ものとインポートを取り扱い、インナーやタイツまで試着させてくれるお店です。 そこでの初めての買い物、トータル10万円以上。 就職して間もない私には、恐ろしい大金でした。 たかが洋服に?消耗品やで? そうは思うものの、抗えない何かを感じながら 震える手でクレジットカードを差し出したあの日。 これが正解なのか後悔になるのかが見えないまま 紙袋いっぱいの洋服を抱え、心細い気持ちで帰りの電車に乗ったのでした。 それから間もなく「正解だった」と思えたのは ・自分を肯定する感覚 ・選び取る喜び ・新しい景色を見た実感 が、一気に得られたからでした。 単なる買い物ではなく「人生が開く決断」をした確信を持てたのです。 その経験がなければ、夫の器のことも「単なる高いもの」と思い込み、 「もっと安いものでいいんだよ、お金は少しでも貯めないと!」 と、いつの間にか刷り込まれた自分を
2025年12月18日


器の向こうの憂い──「なんも考えてない」その奥で光るもの
この半年、我が家にとってなかなかの試練が続き、私の精神はとうに疲弊していました。 (現在は復活しているので、ご安心ください!) その渦中、あらためて「夫の器っていったい何なのだろう?」と、見つめ直す時期を過ごしました。 夫の器へのこだわりは、 ・見た目だけではなく、実用性も兼ね備えていること ・細部まで決して手を抜かない正直さ ここに全てがあらわれている、と思います。 具体的に言えば、一般的な陶器に比べて強く割れにくいよう工夫していること。 使い始めも水洗い程度で、目止めは不要であること。 電子レンジの温めや、家庭用食洗器が使えること。 洗う時も楽しんでもらえるよう、裏のデザインや仕上げにもこだわっていること。 持ちやすさ・口当たりの良さなど。 陶器の煩わしい部分の多くを排し、現代の生活様式に合わせて手軽に使える器。 でも、見た目も美しい。その両立。 ただ、それって目立たない。 誰にも気付いてもらえないかも知れない。 見た目だけでも、いいじゃないか。 どんどん派手にして目を惹いて、目立って目立って他を圧倒する。 きっと、人気者になれるぜ!!(知
2025年11月25日


器がつなぐ時間と出会い──価値を感じ、心に残るひととき
先日のMAZDAのイベントでは、思いがけず素敵な時間を過ごすことができました。 会場には、価格だけでなく器そのものの価値に目を向け、 説明を聞いて納得してくださる方が多くいらっしゃいました。 日々を大切に丁寧に過ごしておられることが窺える方々ばかりで、 その振る舞いからは、ゆったりとした余白が感じられました。 特に二日目は朝からひっきりなしで気を緩める瞬間もないほどでしたが、 その中で交わしたひとつひとつの会話がとても印象に残っています。 あるお客様は、初めて手に取ったカップをじっと見つめ 「この形、すごく落ち着きますね」 と、微笑んでくださいました。 また、別の方は 「少し傷がある方が、一点ものの価値があるような気がする」 と、言ってくださっていました。 反対に、 「少し傷があるものよりも、完全体がいい」 とおっしゃる方も。 同じ色・形の傷あり品も目の前にあって、価格もかなりお手頃になっているというのに! みなさま、ご自身の価値観で選んでおられたことに、私は心震えてしまったのでした。 器に込めた想いを丁寧に受け取ってもらえる喜びを、しみじみ噛み
2025年11月6日


工房で過ごす、二つの世界
工房の扉を開くと、静寂の中に土の匂いと木の机のざらつきが漂っています。 外から差し込む光がゆっくり混ざり合い、空気がほんの少し揺れる。 今日も、何かが生まれそうな予感が工房に満ちています。 ここで過ごす時間は、POOL+の制作とennen.(中国)の企画展の制作──...
2025年9月8日


– wadでの個展を終えて –
本当は、もっと早く書いておきたかったのですが、 気持ちの整理に少し時間がかかってしまいました。 個展が終わってからも、日々の余韻が静かに残っています。 今日は少しだけ、そのことを綴らせてください。 wad個展の風景 今回のwadでの個展は、5年ぶりの開催でした。...
2025年7月3日


詩と思想のあいだで──器をつくるということ
器に込めた、静かな思想 器は、見た目だけでも、使いやすさだけでも、どこか片手落ちだと思うのです。 触れたとき、ふと心がほどけるような。 目に見えないところにまで、手が届いていると感じるような。 そんな器を、静かに、でも確かに、目指しています。 形と機能、美しさの交差点で...
2025年6月17日
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